美味しい貯蔵ミカン
貯蔵ミカン
11月から春先まで店頭に並ぶミカン。しかしその収穫は例年、霜が降りるクリスマス頃には終わります。収穫後もミカンが、流通するのは農家が収穫後のミカンを「貯蔵」しているためです。
「貯蔵」により果実は熟成します。果肉中のクエン酸が分解されて酸のカドが取れ、水分が揮発し、味が濃厚になります。そして、まろやかで芳醇、甘み引立つ貯蔵ミカンが完成します。
11月ごろ出回る、「早生みかん」とはまた違う味わいを楽しめます。
貯蔵ミカンの果皮は、新鮮なものよりむしろ、適度にしなびたものが、果肉の状態が仕上がっています。
匠の技「貯蔵」
数ヶ月たってもみずみずしい果肉。こうした長期間の貯蔵の成功には高い技術が必要です。貯蔵に先立って行われる工程が「予措」(よそ)です。収穫された果実を一定期間、風にさらすことで果実の水分を3%~5%奪い、果皮を締めて体質を高める工程です。
「予措」の後「ロジ」と呼ばれる専用の薄い木箱に並べて、貯蔵庫内に重ねて熟成させます。貯蔵庫は、空気を循環させつつ温湿度を保つ構造になっています。目安は温度約8度、湿度85%とされますが、貯蔵庫の特性にあった調整が必要です。
古くからある土壁の貯蔵庫では、天井と床下に換気口が設けられ、早朝の換気や、打ち水により適度に温湿度をコントロールしてきました。こうした一連の作業は、農家の長年の経験と勘に依存した匠の技術が息づいています。
貯蔵に最適な品種=青島温州
長期間貯蔵する果実は必ず高品質が求められます。体質、糖酸ともに高く仕上げる栽培技術も欠かせません。三ヶ日で貯蔵に使われるのは三ヶ日みかんの主力品種である「青島温州」です。生育期間は早生より長く、糖度が高いだけでなくコクがあり、丈夫な果皮をもつため、貯蔵との相性に優れます。扁平でやや大玉が品種本来の形とされます。三ヶ日の土地では特にコクが出やすく、貯蔵ミカンの代名詞となっています。こうした、品種と土地の特性を活かし高品質の青島温州ミカンが生産されています。
長いものでは4ヵ月超の貯蔵が行われ、蔵だしの青島ミカンの本貯蔵品は高級銘柄として出荷されています。