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【解説】みかんを食べると手が黄色くなる秘密「β-クリプトキサンチン」

みかんを食べると、手が黄色くなる。これはなかなか知られている事実です。でもその理由を知っていますか。

前回に引き続き、みかんの知られていないこと、誤解されていることをお伝えしていきます。

 

▶【解説】三ヶ日みかんの産地が伝えたい「よくある誤解」

 

話は戻り三ヶ日みかんの機能性が注目されるきっかけになったのが、旧三ヶ日町、農研機構、浜松医科大学が三ヶ日町民を対象に行った疫学調査「三ヶ日町研究」です。

調査のきっかけは、三ヶ日町民の平均寿命の高さです。2000年の時点では、全国、静岡県、旧浜松市との比較の中で、三ヶ日町の平均寿命は男女ともに最長となっていました。また、標準死亡化比率の一部の主要死因おいても、全国市町村の中でも非常に低い数字が出ています。

 

出典:厚生労働省 平成12年市町村別生命表の概況

 

調査は「三ヶ日町はみかんの町。みかんをたくさん食べているから、みんな健康なんじゃないか」こうした仮説を検証するためのものでした。

そして10年間の追跡調査の結果、みかんを食べると、生活習慣病のリスクを下げることが分かり、その研究の成果が海外の学会誌に論文としてたくさん発表されています。

▶論文の内容を一般向けにまとめたものが公開されています。日本くだもの農協のホームページ

 

三ヶ日町民約1000人が協力した「三ヶ日町研究」

調査には町民約1000人が協力し、10年間の追跡が行われました。では、どんな調査が行われたのでしょうか。

調査は疫学調査と呼ばれるタイプのものです。疫学調査とは長期間に渡って協力者を追跡調査し、健康状態の変化をひたすら観察する研究をいいます。

その結果を比べて、関連性とその先の因果関係を見つけ出すという、なんとも根気のいる調査です。しかしながら、試験管での実験結果や、動物実験などと比べて、信憑性の高い結果を得ることができるのです。

そして、協力者の健康診断などの結果を10年追跡した結果、協力者の中に骨密度低下、糖尿病、肝機能異常、脂質異常、動脈硬化等の生活習慣病が起こりにくい人たちがいることが分かりました。

そのグループとは、血液中の「β-クリプトキサンチン」の濃度が高かったグループです。

 

みかんに特異的に含まれる色素 β-クリプトキサンチン

「β-クリプトキサンチン」とはいったい何者なのでしょうか。

この名前を知っている方はなかなかいないかもしれません。もう少し有名な「β-カロテン」と同じ「カロテノイド」という色素の仲間です。

残念なことですが、例えばGoogleトレンドで比較するとその検索回数はなんと、「β-カロテン」の10分の1。

先に挙げた「GABA」の100分の1。致命的な知名度の低さですね。

しかし「みかんを食べると、手が黄色くなる」

この事実は、かなり知られているのではないでしょうか。この手を黄色くする色素成分こそが「β-クリプトキサンチン」です。ミカンの果実が成熟終盤になると活発に生合成する成分で、高い抗酸化作用を持ち、食べると体に蓄積して長持ちするという面白い特徴があります。

「みかんを食べると『黄疸』になる」というのは、誤った情報ですので誤解をしないでください。

冬の時期、三ヶ日においては手が黄色くなる人がたくさんいます。手の平も目立ちますが、実は足の裏の色もわかりやすいです。

みかん好きで、自信のある方はお家で靴下を脱いで確認してみてください。

そしてこの「β-クリプトキサンチン」は、温州ミカン、いわゆる普通のみかんに特に多く含まれており、不思議なことに同じ柑橘類で、同じ色をしているはずの「オレンジ」にはそれほど含まれていません。

食品に含まれる「β-クリプトキサンチン」の量は文部科学省が公開している「食品成分データベース」でも調べられますので、ご興味のある方は調べてみてください。余談ですが、他にたくさん含まれている食品は、「ビワ」や「パパイヤ」、「オレンジパプリカ」や一部の香辛料です。それほど量を食べる方は少ないかもしれません。

出典:食品成分データベース 日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年より作成

 

これを裏付けるように、日本人の「β-クリプトキサンチン」の血中濃度を左右するのは温州ミカンによるもので、血中の「β-クリプトキサンチン」の濃度からその人のミカンの摂取量を推定できるという調査結果があります。

実際に、欧米人より日本人の方がβ-クリプトキサンチンの血中濃度が高く、中でも三ヶ日町民の濃度は高くなっています。疫学調査では、この血中濃度を目印(バイオマーカー)に、みかんを食べる量を計算して、結果を出したそうです。

余談ですが、日本の一番消費されている果物は何でしょうか。
答えは「バナナ」。2位は「リンゴ」。3位に「みかん」がやってきます。

かつては1位の消費量でした。ただ、流通する時期が限られている割には、旬の時期にたくさん食べていただいていることに感謝です。

なお、近年の話題があります。

2020年より、「みかんの摂取量と健康寿命」を追跡する研究(三ヶ日町アクティブエイジング研究)がスタートしています。

研究の性質上、結果が出るのは2027年以降とのことです。まだまだ先ですね。7年先の結果を待って食べるかどうかは悩ましいところですが、いったいどんな結果になるのでしょうか。

 

みかんが機能性表示食品

 近年、パッケージでみかける「機能性表示食品」。サプリメントや清涼飲料水でよく見かけるものですが、果物や野菜などの生鮮物でも機能性を表示しているものがあります。実は、日本の生鮮食品で第一号の「機能性表示食品」となったのが「三ヶ日みかん」です。

いわゆる「健康食品」と何が違うのでしょうか。

原則になりますが、食品は効能や効果をうたうことができません。うたうならばそれは「薬」としての承認が必要です。法律によって「薬品」と「食品」は違うと、明確に区別されているのですね。しかし、近年、健康情報が溢れ、あたかも「〇〇が〇〇に効く」イメージを演出する風潮があります。これは私たち、消費者にとってあまり、良いことではありません。

そんな中、「消費者のために、事業者はきちんとした科学的根拠に基づいて機能性を表示するべき」として始まったのが、2015年4月に施行された「機能性表示食品制度」です。

機能性表示食品は食品ですが、販売に当たっては、制度のルールを守り、届け出た機能性に限り、パッケージ等に表示をしていいことになっています。ご興味のある方は、「特定保健用食品」や「栄養機能食品」のことも調べてみてください。

「体にいい」「体に悪い」と情報が耳に入ったとき、「意見なのか事実なのか」「それに基づく研究結果があるのか」「その結果は信頼性の高いものなのか」「それはどんなものか」。

本当なのかな?と疑うのは賢い選択だと思います。(もちろんこのホームページの文章も含めてです。)

例えば「みかんは甘いから高カロリー」。テレビの出演者がこんなことをコメントすることがあります。これは本当なのでしょうか。根拠はあるのでしょうか。次回はよくある誤解について解説しようと思います。

 

【予告】

みかんは甘い。だから太ってしまうのか?
・みかんの9割は水
・みかんは一つで40kcal
・甘くなろうと、カロリー2倍はありえない

 

「知っていますか」三ヶ日みかんの認知度調査

より良い情報発信のために、みかんの認知度調査を実施中です。

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